2026年4月9日、本屋大賞が発表されました
東京・元赤坂の明治記念館で行われた発表会で大賞に輝いたのは、朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』(日経BP/日本経済新聞出版)
発表から数時間でSNSは沸騰中
なぜこの作品はここまで人を動かすのか
その理由を、路地裏書房なりの視点で掘り下げていきます。
作品データ

| タイトル | イン・ザ・メガチャーチ |
| 著者 | 朝井リョウ |
| 出版社 | 日経BP/日本経済新聞出版 |
| 初出 | 日本経済新聞 夕刊(2023年4月〜2024年6月) |
| 単行本化 | 2025年9月 |
| 発行部数 | 17刷・47万部突破(2026年4月時点) |
| 受賞歴 | 2026年本屋大賞 / 第9回未来屋小説大賞 / 第2回あの本、読みました?大賞 |
イン・ザ・メガチャーチ/朝井リョウ(日経BP)
2026年本屋大賞受賞 · 17刷47万部突破
日本経済新聞 夕刊連載(2023〜2024年)を単行本化
どんな小説か? 〜「推し活」を神学する物語〜
本作の中心にいるのは3人だ。レコード会社の経理部に勤める40代の久保田慶彦、推し活にのめり込んでいく内向的な大学生・武藤澄香、推しの俳優の悲報に接した契約社員・隈川絢子。この3人の視点を通して、熱狂を支える”物語”の力と、その先にある救いと危うさを描く。
舞台となるのはファンダム経済――熱狂的なファンコミュニティが作り上げる経済圏だ。「ファンダムを構築する者」「のめり込む者」「かつてのめり込んでいた者」、3つの視点から「今の時代、人を動かすものは何なのか」を掘り下げる。
タイトルの「メガチャーチ」とは?
数万人規模の信者を集める巨大教会のこと。推し活が生み出す熱狂と連帯の場を、現代の宗教的コミュニティとして捉え直す視点が、この小説の核心にある。
選ばれる理由 〜「あなたも関係者」という構造〜
この小説は、3人の語り手が「外側・内側・元内側」を同時に照らしているのが特徴にあります
推し活を「運営する側」から見る久保田の目線は、
私たちが普段見えていない経済の論理をあぶり出す
一方、のめり込む澄香の視点は、
推し活が単なる趣味ではなく生きるための装置になっていく過程をリアルに追います
そしてかつてのめり込んでいた絢子は、
「熱狂の終わり」というテーマを担い、
読者は必ずどこかの視点に「自分ごと」を見出す構造となっており、
推し活を経験した人だけでなく、
仕事や信仰、
コミュニティに「何かを委ねた」経験のある人すべてに刺さる構造です
選ばれる理由 〜「気持ちいい話」ではないのに読まされる〜
朝井さん自身が「私の作品は、読んでいて気持ちがいいものではないという自覚がある」と語っています
そして実際、
この小説には単純な感動も、爽快な結末も用意されていない印象です
それでも47万部を超える理由はどこにあるのでしょうか
理由は、
居心地の悪さそのものが「今の時代の正確な肖像」だからではないかと考えます
推し活の熱狂の中にある孤独、
「物語」によって救われながら同時に支配されていく感覚
朝井リョウは、それを美化せず、断罪もせず、ただ精密に描いています
「『今のこの感じ』を良いところも悪いところも含めて書き、何十年後に『こんな時代あったんだ』と思ってもらえるように」――朝井リョウ(日本経済新聞より)
選ばれる理由 〜「本屋大賞」という選者の本気〜
改めて、本屋大賞は全国の書店員が投票で「一番売りたい本」を選ぶ賞です
朝井さんは「本屋大賞の受賞作は、前に進む・変化を促すといった作品が多いと思っていた。自分の小説はその定義から外れている感じがあった」と語っています
それでも書店員たちは多くの読書好きやそれ以外の方にも「この本に出会ってほしい」
と感じたということです
読んで気持ちよくはなれないけれど、
読まないよりも読んだほうがいい本
そう確信した書店員たちの票が集まった結果が、この受賞結果となったのだと思います
新聞連載小説が本屋大賞を受賞するのは、今回が史上初めてのことでもある
朝井リョウという作家について
2009年、早稲田大学在学中に『桐島、部活やめるってよ』でデビューをしました
2013年には『何者』で直木賞を受賞し、
その後も『正欲』『生殖記』と、
「生きる推進力」というテーマを一貫して追い続けてきた作家です
朝井リョウの小説は「社会通念への問い」が軸にあります
何が正常で、何が異常か
何が救いで、何が依存か
答えを出さず、
問いだけを精密に組み上げる姿勢が、本作でも貫かれています
イン・ザ・メガチャーチ/朝井リョウ(日経BP)
2026年本屋大賞受賞 · 17刷47万部突破
日本経済新聞 夕刊連載(2023〜2024年)を単行本化
こんな人に読んでほしい
まとめ
「推し活」というきわめて現代的な現象を通して、
人間がいかに「物語」を必要とし、
いかに「物語」に呑まれていくかを、
3人の視点から丁寧に解剖した作品です
イン・ザ・メガチャーチ/朝井リョウ(日経BP)
2026年本屋大賞受賞 · 17刷47万部突破
日本経済新聞 夕刊連載(2023〜2024年)を単行本化


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