【書評】『空、はてしない青(上/下)』読後、心がふっと軽くなる”救いの物語”

BOOK

この数日間

仕事と並行して、とある長編小説を読んでいました

とにかく深く胸の中に届くような素敵な小説です

その小説がこちら!

著者:メリッサ・ダ・コスタ/訳:山本 知子/出版社:講談社

『空、はてしない青』です

概要

発売年月:2025年9月18日

ISBN:上→9784065354162 / 下→9784065395875

ページ数:上/下 合計832ページ

本の種類:単行本

発行所:講談社

定価:上/下 各2,310円(税込)

参考:https://sorahate.kodansha.co.jp/

そもそもこの小説を買うとした決め手

①挿絵の雰囲気

先ほどの写真にもあったように、

表紙に描かれたものの雰囲気があまりに非日常であるということです

静かに、それでいて強く訴えかけてくるような不思議な感覚がありました

②心の傷を癒す物語である

一緒についてきたラベルに書かれた著名人コメントで

“致命的な心の傷を、人はいかにのりこえうるか?
ささやくような美しい声で、答えてくれる物語。”


川上弘美(作家)

とありました

最近、私の身近なところで

ある出来事をきっかけに心に深い傷を負ってしまった人がいました

社会復帰も難しく、体にもさまざまな変化が起こりました

これを読んだからと言って、

完全にその人を救えるだなんて思っていませんが、

このタイミングで、このテーマの本が私の目の前に現れたことは

ひとつの巡り合わせなのではないか、

としか考えられませんでした

深く考えず、とにかく今の私には避けては通れない、

必要な本なのではないかと思ったのです

はじめに

たいそうな事件が起きる物語ではありません

でも静かに寄り添ってくれるように、

じわっと心を温めてくれる

そして読後には、

ふっと息が軽くなるような”救い”の感覚が残るんです

この記事では、

本作を読んで特に感じたこと心に残ったセリフ

どんな人におすすめしたいのかをまとめていきます

『空、はてしない青』とは?

・日常の中で抱える不安や孤独

・限りある時間との向き合い方

・沈んだ感情によって自分を見失いかけた瞬間

これらに向き合い、

「生きること」「愛すること」「旅すること」を交え、

旅をテーマに進んでいく深くて優しい長編小説です

あらすじ

主人公のエミル(26歳)は、

若年性アルツハイマーと診断され、余命2年を宣告される

家族からも病院での治療生活を希望されるが、

死ぬまでの残りの人生を病院で過ごし、

そのまま終えることに真反対であったエミルは、

キャンピングカーで”人生最後の旅”に出る決意をする

そこでエミルは、

旅の道連れを掲示板で募集をし、1通の返信が届く

旅を共にすることを希望したジョアンヌという女性は

参加した理由や過去を含む、自分のことについて多くは語らず、

感情にも波がなかった

そんな2人がキャンピングカーでピレネー山脈方面へ旅を始めることとなった

その旅では、さまざまな景色や人々と出会い、

“命”や”愛”、”生きる喜び”について見つめることとなる

そして時間の経過と共に症状が進み、

記憶が薄れていくエミルと、

徐々に心を打ち明けていくジョアンヌによる

「どのように生きて、どのように終えるか」

を描くフランス作家が描く長編小説

この本をおすすめしたい人

・最近、気分が沈みがちな人

・人付き合いや仕事で疲れている人

・生きづらさを抱えている人

・夜に静かに読みたい小説を探している人

・感情が忙しく、自分の心を見失いそうな人

・長編小説を読みたい人

ストレスフルな日常で、心のペースを取り戻したいときにぴったりです

心に響いた言葉3選

心に響いた言葉で言うと、数えきれないくらいあったのですが、

中でもグッときたものを厳選しました

心に響いた言葉①

今このときがほかのどんなときより優れている点がある。

それは、今は私たちのものであるということだ

辛かった”過去”と不安の混ざる”未来”とは対照的に、

“今”この瞬間こそ私たちのものであり、

どんな形にも変えることができる

そして“今だけ”を全力で生きることで

辛い過去を乗り越え、不安の少ない未来へと変えることができる

そう考えると、

私たちには”今”を生きることが

今の自分を肯定し、救う方法として最も重要なんじゃないかと思います

心に響いた言葉②

この世から自分を少しずつ消していくはずが、むしろ生きることに以前より執着するようになってしまった。…彼女が、この世の美しさや純粋な感情や善き心を教えてくれたからだ。

余命宣告を受け、悲観的なエミルが溢した言葉

生きる活力も失いつつあり、投げやりであったところから

この世から離れることを嫌に思うことができるところまで這い上がった

人と接し、過ごしていくことで自分だけでは気付けなかったものに気付けたり、

心が癒えてきたりする

良くも、死ぬことに対する恐怖心が増幅してしまうほどに

人間の温もりには唯一無二の偉大な力があるのだと思います

心に響いた言葉③

太陽がもう出ていないと言って泣いたら、その涙で星が見えなくなるだろう。

過去の出来事に悲しんでばかりいると、

その時に起こっている美しい出来事や瞬間を見逃してしまう、ということだと受け取りました

たとえ、過去の出来事がどうしようもない最悪なものだったとしても

それが現在に及んで最悪であり続けるとは限らない

その悲観的な出来事が、

新しい美しさを創出してくれるための第一歩なのだとしたら、

私もしっかりと眼を開けていたいと思いました

感想

間違いなく、読んで良かったと思います

心の修復が必要とする人にはぜひ読んでほしい小説です

単に「落ち込んでいないで顔をあげよう」といった手段は取らず、

「はじめは落ち込んでいていい。けど実は今はもっと素敵なことが待っているから、

良かったら顔もあげてみてね」

と優しく当事者に寄り添ってくれる印象です

文章においても、

情景が正確に想像できるくらい繊細な描写が随所にあり、

それによって物語への没入感が素晴らしいものとなりました

そして私もこういう旅を長期休みをとって行ってみたいな…とも思いました

この物語を読んでいて感じたことで、

“人は誰しも1人では生きていけない”んだということです

人と人でこそ生まれる優しさや温かさが、

人の心に空いた穴を埋めてくれるんだと思います

そして、

囚われるような辛い過去や不安を抱える未来がある中で

今私たちに与えられているのは”今”であり、変えることができるのも”今”である

つまり、今を生きることがこれまでの苦しみを和らげてくれるんだと

どれも私には新しい考えで、

美しい視点だと思い、

これから生きる上での大事な2冊になったんだと確信しました

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