「テーマが重そうで、読んで暗くなりそう…」
「虐待とか孤独とか、しんどくなりそうで踏み出せない」
「映画化されているけどどれくらい良い作品なのか気になる」
この記事は、そんな迷いを持っている人向けに書きました
あらすじ・読み心地・向いている人・向いていない人まで、実際に読んだ視点から正直にお伝えします
基本情報・受賞歴

タイトル:52ヘルツのクジラたち
著者:町田 そのこ
出版社:中央公論新社
単行本発売:2020年4月
文庫本発売:2023年5月
価格(文庫版):814円(税込)
映画化:2024年3月


全国の書店員が「自分が一番売りたい本」として投票して決まった本屋大賞で第一位に輝きました
毎日お客さんに本を手渡しているプロたちが選んだ第1位というのは、それだけで十分な信頼の根拠になります
2021年の大賞受賞後、映画化(2024年)もされた話題作です
どんな物語?(あらすじ)
東京から九州の地方へと逃げるように移り住んだ女性・三島貴湖(みしまきこ)。過去から逃れるように越してきた新しい土地で、彼女が出会ったのは声を発しない少年——通称「アンちゃん」だった。
少年の体には虐待の痕があった。貴湖はかつて自分を救ってくれた人物「52」の記憶を呼び起こしながら、アンちゃんに手を差し伸べようとする。物語は現在と過去が交互に語られ、貴湖がなぜここに流れ着いたのか——その深い傷の正体が徐々に明らかになっていく。
誰にも届かない声で鳴き続ける「52ヘルツのクジラ」のように、声を上げても誰にも聞こえなかった人々の物語。そして、その声をちゃんと聞こうとする人間の強さの物語。
一言で言うと、
「届かなかった声が、誰かに届く瞬間を描いた孤独と救済の物語」です
重いテーマを扱いながら、
読後は「暗い気持ちのまま終わる」作品ではありません
「52ヘルツのクジラ」って?
世界で最も孤独なクジラを知っていますか?
「52ヘルツのクジラ」というクジラがいます
その鳴き声の周波数は、他のクジラたちとは違う「52ヘルツ」
だから、
どんなに大きな声で叫んでも、
その声は仲間には届かず、返事も返ってきません
この小説『52ヘルツのクジラたち』は、
そんな“届かない声”を抱えた人たちの物語です
読みやすさ・難易度
| ページ数 | 約320ページ(文庫版) |
| 読了の目安 | 4〜6時間 |
| テーマの重さ | 重め(虐待・ヤングケアラー・搾取的関係) →読後感は「希望」に着地 |
| 文体・難易度 | テーマは重いが読みやすい 難解な表現はなし |
| 映画化との関係 | 映画を先に見ていても、原作は内面描写が格段に深く描かれており、また違った体験ができる |
読み始めは正直しんどいです
貴湖の過去や、アンさんの状況を読むたびに胸が痛くなります
でも町田そのこさんはその「しんどさ」の中に、
人間の尊厳と回復力を丁寧に見つけていく書き手と言えます
実際に読んだ感想
「声が届かない」という経験は誰にでもある
「52ヘルツのクジラ」というタイトルの意味が、
読み進めるにつれてどんどん深くなっていく感覚です
最初は「クジラの話かな」と思っていたものが、
気づいたら「私にも52ヘルツの声があった」
「誰かの52ヘルツを聞き逃していたかもしれない」
という感覚になります
そのじわじわとした拡張感がこの本の真骨頂です
ヤングケアラー、搾取的な人間関係、
声を上げても気づいてもらえない孤独、
これらは決して他人事ではありません
「自分の声が届かない」という感覚に一度でも覚えがある人には、
主人公・貴湖の痛みが他人事として読めないはずです
本屋大賞1位に、読み終えて納得した
「なぜこれが本屋大賞1位なのか」という問いの答えが、
読み終えてはっきりわかりました
テーマの重さと、
希望へ向かう物語の強さのバランスが絶妙なのです
しんどいけど読み続けられる、
重いけど読後に「よかった」と思える、
この感覚を届けられる小説が、
多くの書店員にとっての「売りたい本」になるのは当然だと思います
心に残った名言・言葉
ことばのしおり①「52ヘルツのクジラ」
まずはこのクジラが実在するという事実に驚かされました
広大な海の奥で、仲間を現在進行形で探し続けているクジラがいて、
そして他のクジラたちが
52ヘルツの声を聞き取ってくれると信じて、
声を発し続けていることにとても胸を打たれた感覚になりました
ことばのしおり②
水疱瘡やおたふく風邪と同じでな、小さな子どもの内に覚えておかきゃならんことを大きくなって知るのは、ものすごくしんどいものよ。
小さな頃から挫折や痛みを味わう、
乗り越え方を知るという積み重ねが人を大きくするのだと思いました
ことばのしおり③
ひとには魂の番がいるんだって。愛を注ぎ注がれるような、たったひとりの魂の番のようなひと。あんたにも、絶対いるんだ。
孤独だと感じるその人でも、
今その時出会えていなくても、
必ずどこかであなたを見つけ出してくれる1人が
必ず現れるんだと思わせてくれる台詞です
向いている人・向いていない人
| ✔︎こんな人に向いている | △向いていないかもしれない人 |
|---|---|
| ・「声が届かない」孤独に覚えがある人 ・深く感動できる小説を求めている人 ・映画をみて原作も読んでみたい人 ・孤独・救済・人間の回復呂おくがテーマの話が好きな人 ・本屋大賞受賞1位作品を読んでみたい人 ・重いテーマを超えた先の感動を体験したい人 | ・虐待・家族問題の描写が心理的につらい人 ・読後にスッキリ爽快感を求める人 ・ミステリー・エンタメ系が好みの人 ・気軽に読める軽い小説を求めている人 |
結論:買う価値はあるか
「孤独」「声が届かない感覚」「誰かに救われた記憶」
このどれかに思い当たるものがあるなら、
とてもおすすめです
孤独を味わった人々の気持ちを代弁してくれる寄り添い型の物語とも言えます
2021年本屋大賞受賞・映画化という実績が示すとおり、
普遍的に刺さる物語として完成度が高い作品です
重いテーマながら読後感は「希望」に着地する構成は見事で、
「救われた」という感想が多い理由が読み終えてよくわかります
ただし、
虐待や搾取的な関係の描写が心理的につらい方には合わない可能性があります
「重さの先にある感動」を体験したい人に、
自信を持って勧められる一冊です



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