最初に:朝井リョウは「どれから」が一番大事な作家
朝井リョウの作品は、振れ幅がとんでもなく大きいです
デビュー作の爽やかな青春小説『桐島、部活やめるってよ』、就活の自意識を抉る直木賞作『何者』、多様性の闇を撃ち抜く『正欲』、SNS時代の推し活を解剖した本屋大賞作『イン・ザ・メガチャーチ』、そして痔の話で500ページ書ききるエッセイ『ゆとりシリーズ』
同じ作家が書いたとは思えないほど作風が違います
つまり、最初の一冊を間違えると「あ、自分には合わなかったかも」で終わってしまう可能性があるんです
これは本当にもったいない…
朝井リョウは現代日本文学のなかでも屈指の「観察眼」を持つ作家なので、自分の好みに合う入口さえ見つかれば、そこから一気に世界が広がります
この記事では、あなたが今どんな読書体験を求めているかに合わせて、3つのルートを提案します
「とりあえず代表作」ではなく、「あなたにとっての正解」を選んでください
あなたに合うのはどれ?目的別の3ルート
まずはざっくり、どのルートが自分に合うか見てみてください
ROUTE A 王道ルート|『何者』からはじめる
直木賞受賞作からスタートし、朝井リョウの「自意識を抉る筆致」をじっくり味わうルート。バランス重視。
▶ 就活経験者/20代前半/SNSとの距離感に悩んだことがある人
ROUTE B 社会派ルート|『正欲』の衝撃で殴られたい
いきなり朝井リョウの最尖端から入る上級者ルート。「読む前の自分には戻れない」体験を最初から。
▶ 重厚な小説が好き/多様性という言葉に違和感を持っている人
ROUTE C エッセイルート|まず笑いたい
小説からではなく、爆笑エッセイ『ゆとりシリーズ』から入って、朝井リョウの人柄に触れるルート。
▶ 重い小説は苦手/電車で読まないと約束できる人/笑いに飢えている人
どのルートも最終的には全作品に行き着けるよう設計しているので、自分の気分に正直に選んでください
それぞれ詳しく見ていきます
王道ルート:『何者』からはじめる
迷ったらこれです
朝井リョウの代表作を順に押さえる、いちばん失敗の少ないルートです
『何者』2012年刊/第148回直木賞受賞作/新潮文庫
直木賞
就活
SNS
就活生5人がシェアハウスのような集まりを通じて、互いの「何者かになりたい」という焦燥を露わにしていく群像劇。SNSでの裏アカ運用、自己分析、内定への嫉妬。語り手・拓人の冷静な観察を読みながら、読者は最後にとんでもない一撃を喰らうことになります。
朝井リョウが直木賞史上初の平成生まれ・男性最年少受賞者となった作品で、彼の作風を理解するうえで避けられない一冊。佐藤健さん主演で映画化もされています。
こんな人におすすめ
| ✔︎こんな人におすすめ・向いている | △向かない人 |
|---|---|
| ・就活を経験した、または控えている人 ・SNSで他人と自分を比べて疲れた経験がある人 ・朝井リョウの代表作を押さえたい人 ・ラストで価値観をひっくり返されたい人 | ・就活ものに全く興味がない人 ・明るく爽やかな読後感を求めている人 ・「自意識」というテーマに食傷気味の人 |
読者のリアルな声

途中まで読んだ時点での感想と、最後まで読み終えた上での感想がかなり変わりました。ただの就活奮闘記だと思っていたのですが、そんな浅いものではなかった。自分を振り返る機会をくれた作品です。

初めて朝井リョウを読んだのがこの一冊。もう6年経ちますが何度も読み直しています。朝井リョウの世界観がたまらなく好き。
私も実際に読み、自分ごととして読めてしまうところが印象的でした
自分の中の見たくない部分を、文字通り言語化されてしまう感覚で、それが朝井リョウを読むということだと思います
『桐島、部活やめるってよ』2010年刊/小説すばる新人賞受賞・デビュー作/集英社文庫
青春
高校
群像劇
バレー部のキャプテン・桐島が突然部活をやめた。本人は一度も登場しないまま、彼の不在が周囲のクラスメイトたちの日常をじわじわと揺らしていく――章ごとに視点が切り替わる青春群像劇。神木隆之介さん主演で映画化、日本アカデミー賞最優秀作品賞も受賞しました。
『何者』に比べると刺さり方は柔らかいですが、朝井リョウの「観察眼」の原型が完成された形で出ている作品。スクールカースト、それぞれの生き辛さ、勝ち組/負け組の境界線。10代で読むのと30代で読むので感想が違ってくるタイプの小説です。
こんな人におすすめ
| ✔︎こんな人におすすめ・向いている | △向かない人 |
|---|---|
| ・青春小説が好き ・群像劇・多視点小説が好み ・映画版を見て原作も気になった人 | ・明確な事件や決着がほしい人 ・主人公が一人いてほしい人 |
読者のリアルな声

話題になった当時、高校生のときに初読しました。アラサーになった今読み返してまず思ったのは、登場人物の選曲が良すぎるということ。チャットモンチーもaikoも大塚愛も、出てくる曲全部が懐かしい。高校生のあの頃の自分と重ねながら、登場人物それぞれの感情に共感したり「こういう人いたな」と自分の知ってる誰かと重ねたり、青春時代にタイムスリップしてきた感覚でした。

『イン・ザ・メガチャーチ』が面白くてデビュー作も読みました。同じ高校で同じ空間にいながら、それぞれ全然違う価値観や世界線にいるみたいで、桐島が部活を辞めることが彼らを繋いでいるのかそうでないのか、絶妙な因果があったりなかったりする。当の桐島は本の中を通じて常に霧にかかってよく見えない、そんな感じです。
この本は、10代で一回、20代で一回、30代で一回読んでほしい作品です
同じ本のはずなのに、毎回違う登場人物に感情移入することになります
『正欲』2021年刊/第34回柴田錬三郎賞・本屋大賞4位/新潮文庫
社会派
多様性
問題作
作家生活10周年記念作品。「多様性を尊重する時代」というスローガンの裏側で、誰にも理解されない「欲」を抱えた人々が描かれます。検事・啓喜、女子大生・八重子、契約社員・夏月。彼らの人生がある事故死をきっかけに重なり始めるとき、「多様性」という言葉の傲慢さが暴かれます。稲垣吾郎さん・新垣結衣さん主演で映画化。
朝井リョウのキャリア最大の問題作といっていい一冊。あらすじではマイノリティを扱う社会派小説のように見えますが、読み終わると「自分はマジョリティとしてどれだけ無自覚に他者を踏みつけてきたか」を突きつけられます。
こんな人におすすめ
| ✔︎こんな人におすすめ・向いている | △向かない人 |
|---|---|
| ・社会派の重厚な作品を読みたい人 ・「多様性」という言葉に違和感を抱いたことがある人 ・読了後、しばらく考え込みたい人 | ・性的指向に関するセンシティブな描写が苦手な人 ・明るい気持ちで読書を終えたい人 ・登場人物に共感しながら読みたい人 |
読者のリアルな声

こんな読後感は初めて。頭と心がぐるぐる不安で気持ちが悪いのに、読む前よりは明らかに、生きることに対しての自分の感覚が少し広く優しくなったような。不思議です。

多様性に寄り添うことこそ正義だと安易に信じることの傲慢さに気付かされた。「正しい欲」というものが存在するという認識は、少し生き方を楽にしてくれます。
わたしがSNSと向き合うきっかけを改めて与えてくれました
「想像力の射程外にいる他者」をどう扱うか、という問いから、しばらく逃げられなくなります
『イン・ザ・メガチャーチ』2025年刊/第23回本屋大賞受賞/日経BP
本屋大賞2026
推し活
SNS
2026年本屋大賞受賞作。地下アイドル運営に関わる人物、推しに自分を重ねすぎてしまう女子大生、世間から激しい糾弾を受ける女性。3つの視点が交錯しながら、SNS時代の熱狂・信仰・消費・加害性を描き切った社会派長編です。朝井リョウは本作で、直木賞と本屋大賞の二冠を達成した初の作家になりました。
『正欲』が「多様性」というキーワードを解体した小説だとしたら、本作は「推し活」というキーワードを解体した小説。SNSで誰かを応援する/誰かを糾弾する、その両方の構造を描いています。
こんな人におすすめ
| ✔︎こんな人におすすめ・向いている | △向かない人 |
|---|---|
| ・推し活をしている/していた人 ・SNSの炎上文化に疲れている人 ・『正欲』を読んで「次」を待っていた人 | ・推しを純粋に応援する自分でいたい人 ・長編小説(2200円・単行本)に手を出すのが重い人 |
読者のリアルな声

朝井リョウの新作は、加速するオタクのファンダム文化を紐解いた素晴らしい風刺作品。仕掛ける側、消費する側、演者、それぞれの気持ちが詳細に描かれていて解像度が高い。

これ、ガチ推し活界隈の目に入ったらどうなるんだ……。読了後、あなたは素面のまま推し活に戻れるのか。
「推し活」というきわめて現代的な現象を通して、人間がいかに「物語」を必要とし、
いかに「物語」に呑まれていくかを、3人の視点から丁寧に解剖した作品です
社会派ルート:『正欲』の衝撃で殴られたい人
朝井リョウのなかでも特に評価の高い「社会派の3冊」を一気に読むコース。最初の一撃が大きいぶん、合えば一気にハマります。
| 順番 | 作品 | テーマ | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 1 | 『正欲』 | 多様性/他者理解の限界 | ★★★★ |
| 2 | 『イン・ザ・メガチャーチ』 | SNS/推し活/加害性 | ★★★★★ |
| 3 | 『死にがいを求めて生きているの』 | 平成という時代/生きる意味 | ★★★★ |
『死にがいを求めて生きているの』は、伊坂幸太郎さんの呼びかけで始まった「螺旋プロジェクト」の一作です
植物状態で眠り続ける智也と、彼を見守り続ける雄介の関係を軸に、平成という時代を生きる若者たちの「自滅と祈り」を描きます
正欲とイン・ザ・メガチャーチを読んだあとに読むと、朝井リョウが一貫して何を書いてきたかが立ち上がってくるのでおすすめ
エッセイルート:まず笑いたい人
「重いの読みたくない」「とりあえず朝井リョウってどんな人か知りたい」
そんな方は、エッセイ『ゆとりシリーズ』から入るのが正解です
直木賞作家がここまで馬鹿馬鹿しい話を書いていいのか、と心配になるレベルで爆笑できます
| 順番 | 作品 | 刊行年 |
|---|---|---|
| 1 | 『時をかけるゆとり』 | 2014(『学生時代にやらなくてもいい20のこと』改題) |
| 2 | 『風と共にゆとりぬ』 | 2017 |
| 3 | 『そして誰もゆとらなくなった』 | 2020 |
エッセイは刊行順に読むことを強くおすすめします
痔瘻のエピソードや謎のバレーボール挑戦など、続巻で「あの話の続き」が出てくるので、この順番が大事です
個人的にいちばん笑ったのは『風と共にゆとりぬ』の入院エピソードでした
電車で読んでいて笑いを堪えられず、隣の人に怪しまれた本でした
| ✔︎こんな人におすすめ・向いている | △向かない人 |
|---|---|
| ・気軽に笑いたい ・朝井リョウの人柄を知ってから小説を読みたい ・下ネタ・自虐ネタに耐性がある | ・下ネタが本当に苦手 ・静かな場所でしか本を読めない人(笑いを堪える羽目になります) ・直木賞作家の威厳を保ちたい人 |
本屋大賞2026『イン・ザ・メガチャーチ』はいつ読む?
2026年4月9日、朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』が本屋大賞を受賞しました
一次投票には全国490書店698人、二次投票には345書店470人の書店員が参加し、452点という大差での受賞です
受賞のニュースで「読んでみたい」と思った方も多いはず
ただ、初めての朝井リョウとして本作を選ぶのは、正直あまりおすすめしません
理由は3つあります
- 2200円の単行本で重量感がある:物理的にも内容的にも
- テーマが尖っている:推し活・SNS炎上・加害者と被害者の構造
- 朝井リョウの過去作を踏まえると深く読める:特に『正欲』との連関が強い
もし時間がない人は『何者』(文庫737円)を先に読んで朝井リョウの文体に慣れ、
その流れで『イン・ザ・メガチャーチ』に進むのが理想です
逆に、「いきなり最新作で殴られたい」という人にはおすすめです
今いちばん話題の本屋大賞作を、リアルタイムで読む体験には替えがたい価値があります
朝井リョウをAudibleで聴くという選択
朝井リョウの主要作品は、AmazonのAudible(オーディブル)で配信されています。
『何者』『正欲』『どうしても生きてる』など、対象作品を耳で楽しめます。
※30日以内に解約すれば0円。期間中に1冊聴くだけで約1500円分が無料に。
Audibleなら無料で聴ける作品も
朝井リョウ作品は文章のリズムが独特で、声優陣の朗読で聴くと文字で読むのとはまた違う発見があります
特に『正欲』は、複数視点の章を声優14名が分担して朗読していて、
人物の解像度が文字よりさらに上がります
具体的には:
- 『何者』:声優・榎木淳弥さんによる一人朗読。語り手・拓人の冷静な観察視点が、声でより際立ちます
- 『正欲』:声優14名による豪華朗読。章ごとに視点が変わる構成と相性が抜群
- 『どうしても生きてる』:短編集なので隙間時間に1編ずつ聴ける
Audibleは30日間の無料体験があり、期間中に何冊聴いても無料
1冊が約10時間ある朝井作品は、通勤・家事・運動の時間を読書時間に変える最強の組み合わせです
「本を開く時間がない」という人ほどハマります
体験期間が終わるまでに解約すれば料金はかかりません
わたしも最初は「どうせ続かない」と思って試しましたが、いま1年目継続中です
まずは『何者』を耳で体験してみる
30日間の無料期間中に1冊聴けば、それだけで月額1500円分がタダ。
合わなかったら解約すればOK。リスクゼロで朝井リョウの世界に飛び込めます。
よくある質問
- Q朝井リョウは何から読めばいい?
- A
迷ったら『何者』です。直木賞受賞作で文庫もあり、朝井リョウの作風が最もバランスよく味わえます。社会派から入りたい人は『正欲』、笑いたい人は『時をかけるゆとり』からどうぞ。
- Q『何者』と『正欲』はどっちが先?
- A
『何者』を先にしましょう。『正欲』は朝井リョウの作風がさらに尖った10周年記念作で、衝撃度が桁違い。先に『何者』で文体に慣れておいたほうが、『正欲』の威力を最大限受け止められます。
- Q『イン・ザ・メガチャーチ』だけ読んでも大丈夫?
- A
単独で読んでも問題なく楽しめます。ただし『正欲』を先に読んでおくと、朝井リョウが一貫して書いてきた「想像力の射程外にいる他者」というテーマがより深く理解できます。
- Qエッセイから読むのはアリ?
- A
大いにアリです。むしろ「朝井リョウの小説は重そうで腰が引ける」という人にはエッセイから入るほうがおすすめ。直木賞作家とは思えない馬鹿馬鹿しさで、彼の人柄に触れられます。
- Q朝井リョウの作品はAudibleで聴ける?
- A
『何者』『正欲』『どうしても生きてる』など主要作品が配信されています。30日間の無料体験で1冊聴けば、月額1500円分が無料になります。期間内に解約すれば料金は発生しません。
- Q本屋大賞2026受賞作はどれ?
- A
朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』(日経BP)です。SNS時代の推し活と加害性を描いた社会派長編。朝井リョウは直木賞と本屋大賞を制した初の作家となりました。
まとめ:朝井リョウは「自分の入口」さえ見つかれば一気に世界が広がる
この記事の要点
- 初めての朝井リョウは、自分の気分に合うルートを選ぶのが大事
- 王道なら『何者』→『桐島』→『正欲』→『イン・ザ・メガチャーチ』
- 社会派でいくなら『正欲』→『イン・ザ・メガチャーチ』→『死にがいを求めて生きているの』
- 笑いたいならゆとりシリーズ3部作を刊行順に
- 本屋大賞2026受賞作は『イン・ザ・メガチャーチ』。先に『正欲』を読むと深まる
- Audibleなら30日間無料で『何者』『正欲』が聴ける
朝井リョウは、「読む前の自分には戻れない」と感想を残す読者がとにかく多い作家です
それは彼の作品が、読み手のなかの見たくない部分を正確に言語化してしまうからです
だからこそ最初の一冊が大事で、合う入口さえ見つかれば、そこから一生付き合える作家になります
この記事が、あなたにとっての「最初の一冊」を見つける助けになったら嬉しいです
読んだあとの感想は、ぜひ路地裏書房のコメント欄で聞かせてください


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