2026年の芥川賞・直木賞(第175回・2026年上半期)は、
7月15日の選考会で受賞作が決定しました。
🏆 芥川賞 小砂川チト『ゾンビ回収婦』(講談社)
🏆 直木賞 朝倉かすみ『けんぐゎい』(光文社)
この記事では、
年に30冊以上読む書評ブロガーが受賞作2作と候補作8作、あわせて全10作を、
あらすじ・おすすめしたい人・特記事項つきで解説します。
選考経過や、受賞作を安く読む方法まで網羅しました。
この記事でわかること
選考結果と、その舞台裏
今回の選考には、いくつか注目すべき点がありました。
📌 芥川賞は「僅差」だった
報道によれば、『ゾンビ回収婦』の受賞は接戦の末に決まりました。他の候補作も高く評価されていたことがうかがえます。
📌 直木賞は「満場一致」
一方、『けんぐゎい』は選考委員の意見が割れることなく受賞。作品の完成度の高さが際立った形です。
📌 芥川賞受賞者は3度目の候補
小砂川チトさんは2022年・2024年にも候補入りしており、3度目の挑戦での受賞となりました。
また今回はお笑いコンビ・オードリーの若林正恭さんの『青天』が
直木賞候補に選ばれたことでも話題になりました。
芸人による小説が候補入りするのは異例のことです。
選評はどこで読める?
受賞作そのものより、
「選考委員が何を語ったか」に関心を持つ読者は少なくありません。
選評は、作品の読みどころを知る最良のガイドでもあります。
📖 芥川賞の選評:受賞作全文とともに『文藝春秋』9月号(2026年8月10日発売)に掲載されます。これは長年の慣例です。
📖 直木賞の選評:『オール讀物』誌に掲載されるのが通例です。
💡 どちらも雑誌なので、読み放題サービスの対象になっていれば追加料金なしで読める場合があります。
今回の選考について報じられた内容を整理すると、
芥川賞は候補作の評価が拮抗した接戦、
直木賞は『けんぐゎい』が圧倒的な支持を得た——
という対照的な結果でした。
同じ日に決まった2つの賞で、
これほど選考の様相が異なるのは興味深い点です。
芥川賞 受賞作・候補作 全5作
芥川龍之介賞は、
新人作家による純文学の短編・中編に贈られる賞です。
文芸誌に掲載された作品が対象となるため、
単行本化されていない作品も候補に挙がります。
『ゾンビ回収婦』小砂川チト
「この世界の秘密をあなたに教えたい」——
語り手は、あるホテルでたった一人の掃除婦。
殺されたゾンビの骸を拾い集め、
世界を美しく保つのが彼女の仕事です。
AI〈やつら〉に侵食された世界で、
夫とともに職を失った「わたし」の前に、
もうひとつの現実が立ち現れます。
三十余年、良い子で大人になった彼女は、
感謝されることも褒められることもないまま、
懸命に役割をこなし続ける——。
👤 おすすめしたい人:AIと労働の問題に関心がある人/短い作品で芥川賞に挑戦したい人/働くことの意味を考えたい人
📌 特記事項:著者は3度目の候補で受賞。2022年「家庭用安心坑夫」で第167回、2024年「猿の戴冠式」で第170回の候補に挙がっていました。選考は僅差だったと報じられています。約160ページと読みやすい分量です。
『悪い血』鈴木涼美
『ギフテッド』などで知られる鈴木涼美による候補作。
現代を生きる人々の関係と、
そこに流れる血の重みを見つめます。
👤 おすすめしたい人:鈴木涼美の作品を追っている人/文芸誌で最新の純文学に触れたい人
📌 特記事項:文學界2026年6月号に掲載。単行本化については各出版社の情報をご確認ください。
『丹心/まごころ』仁科斂
廃墟マンションを美術館に——
美術館設計は建築家の夢。
師の願いを叶えるべく、
助手のレンは住民の立ち退きに奔走します。
資本家令嬢Qと、
未完成の建物を買った人民の欲望が交差し、
物語は思わぬ方向へ転がっていきます。
「矛盾だらけの中国大陸に、まごころはあるか」を問う作品です。
👤 おすすめしたい人:中国を舞台にした物語に興味がある人/建築や都市開発をテーマにした小説が好きな人
📌 特記事項:2026年7月15日発売・2,200円(税込)。新潮新人賞受賞作「さびしさは一個の廃墟」を併録しています。
『ソリティアおじさんがいた頃』村司侑
「人にぶつかっていないと、自分が生きているかどうかよくわからなくなる」——
アメフト部に所属する高校3年生の中村昴。
万年2回戦どまりのチームは、
相手校の練習を隠し撮りして引退大会に臨むも、
強豪校に敗れます。
引退後、みなが受験に向かうなか、彼は……。
👤 おすすめしたい人:スポーツを題材にした青春小説が好きな人/10代の焦燥感を描いた作品を読みたい人
📌 特記事項:2026年7月7日発売・1,870円(税込)。文學界2026年5月号掲載作の単行本化です。
『アンチ・グッドモーニング』八木詠美
『空芯手帳』で注目を集めた八木詠美による候補作。
日常のなかにある違和感を、
独特の距離感で切り取ります。
👤 おすすめしたい人:『空芯手帳』が良かった人/現代の生きづらさを描いた作品が好きな人
📌 特記事項:2026年6月29日発売・1,870円(税込)。文藝2026年春季号掲載作です。
直木賞 受賞作・候補作 全5作
直木三十五賞は、
無名・新人・中堅作家によるエンターテインメント作品に贈られる賞です。
芥川賞と異なり、
単行本として刊行された作品が対象となります。
『けんぐゎい』朝倉かすみ
利発だが酷い痘痕のある姉・ふゆと、
逆上せ癖があり器量よしの妹・りよ。
幼くして父を亡くした二人は、
ふゆが手習師匠の手伝いに、
りよが船宿の下女奉公に出されます。
師匠の養子で歪んだ性癖を持つ宗三郎に手籠めにされたふゆは懐妊。
しかし、現人神と崇められる女医者と出逢い、
彼女の人生は大きく変わっていきます。
👤 おすすめしたい人:時代小説を読んでみたい人/女性の生き方を描いた物語が好きな人/『平場の月』が良かった人
📌 特記事項:選考会では満場一致で受賞と報じられました。『平場の月』の著者が、作家生活20年を経て初めて挑んだ時代小説。落語のような独自の語り口で、理不尽な扱いを受けた者たちの尊厳を描き切ります。
『見えるか保己一』蝉谷めぐ実
『化け者心中』『おんなの女房』などで
高く評価されてきた蝉谷めぐ実による候補作。
江戸を舞台に、
盲目の学者・塙保己一をめぐる物語が描かれます。
👤 おすすめしたい人:江戸を舞台にした時代小説が好きな人/蝉谷めぐ実の緻密な筆致を味わいたい人
📌 特記事項:著者は時代小説の分野で数々の賞を受賞してきた実力派。近年の時代小説を牽引する一人です。
『多類婚姻譚』凪良ゆう
本屋大賞を2度受賞した凪良ゆうによる候補作。
「婚姻」という制度を多角的に見つめ、
人と人が結ばれることの意味を問い直します。
👤 おすすめしたい人:『流浪の月』『汝、星のごとく』が好きな人/家族や結婚のあり方を考えたい人
📌 特記事項:著者は『流浪の月』(本屋大賞2020)『汝、星のごとく』(本屋大賞2023)で2度の本屋大賞を受賞。『汝、星のごとく』は2026年秋に映画化が控えています。
『#台所のあるところ』原田ひ香
『三千円の使いかた』『ランチ酒』などで
人気を集める原田ひ香による候補作。
台所という場所を切り口に、
そこに集う人々の生活と心情を描きます。
👤 おすすめしたい人:『三千円の使いかた』が良かった人/食と暮らしを描いた小説が好きな人
📌 特記事項:著者は生活に根ざしたテーマを描く名手として知られ、『三千円の使いかた』はドラマ化もされました。
『青天』若林正恭
お笑いコンビ・オードリーの若林正恭による初の小説。
エッセイストとしても高く評価されてきた著者が、
初めて挑んだフィクションです。
👤 おすすめしたい人:若林正恭のエッセイが好きな人/芸人が書いた小説に興味がある人/お笑いファン
📌 特記事項:芸人による小説が直木賞候補に選ばれるのは異例のことです。当ブログでも本作のレビュー記事を公開しています。
受賞作を安く読む方法
候補作10作をすべて単行本で揃えると、1万円を超えます。
全部読みたいけれど予算が——
という方に、
2つの方法をお伝えします。
方法1:『文藝春秋』9月号で芥川賞受賞作を読む
芥川賞には長い慣例があります。
受賞作は『文藝春秋』誌に全文掲載されるのです。
今回も2026年8月10日発売の『文藝春秋』9月特別号に
「ゾンビ回収婦」が全文掲載されています。
💡 ここが重要:雑誌はKindle Unlimitedの対象になっていることがあります。もし『文藝春秋』が読み放題の対象なら、月980円で芥川賞受賞作を読める計算になります。対象かどうかは変動するため、登録前にリンク先でご確認ください。
方法2:短い作品は「耳で聴く」
芥川賞の受賞作は、
比較的短い作品が多いのが特徴です。
『ゾンビ回収婦』も約160ページ——
オーディオブックなら、
通勤の往復1〜2回で聴き終わる分量です。
「純文学は難しそう」と感じる方こそ、
朗読で聴くと入りやすいことがあります。
声の抑揚が、
文字だけでは掴みにくい語りのリズムを補ってくれるからです。
全部買う場合
対象の可能性
耳でも聴ける長さ
賞を追いかける読書は冊数がかさみます。読み放題・聴き放題なら、気になる作品を気軽に試せます。
そもそも芥川賞と直木賞は何が違う?
同じ日に発表される2つの賞ですが、
対象も性格もまったく異なります。
ここを押さえておくと、
どちらの受賞作が自分に合うか判断しやすくなります。
| 芥川賞 | 直木賞 | |
|---|---|---|
| 対象 | 純文学の短編・中編 | エンターテインメント作品 |
| 作家 | 新人作家 | 新人〜中堅作家 |
| 掲載形態 | 文芸誌の掲載作(単行本未刊行も対象) | 単行本として刊行された作品 |
| 読みやすさ | 短い作品が多い(今回は約160ページ) | 物語として起伏があり読みやすい |
| 選評掲載誌 | 『文藝春秋』 | 『オール讀物』 |
💡 ざっくり言うと:芥川賞=「表現の新しさ」を競う賞/直木賞=「物語の面白さ」を競う賞です。
どちらも主催は日本文学振興会で、選考会は年2回(1月・7月)同じ日に開かれます。
まず読むならどっち?
10作すべてを読む必要はありません。
あなたの好みで、最初の1冊を選んでください。
| こんな方に | おすすめの1冊 |
|---|---|
| 短時間で受賞作を読みたい | 『ゾンビ回収婦』(約160ページ) |
| じっくり物語に浸りたい | 『けんぐゎい』(満場一致の直木賞) |
| 凪良ゆうが好き | 『多類婚姻譚』 |
| 生活に根ざした物語が好き | 『#台所のあるところ』 |
| お笑いファン | 『青天』(芸人初の直木賞候補作) |
| 時代小説を読んでみたい | 『けんぐゎい』/『見えるか保己一』 |
次回(第176回)の発表はいつ?
芥川賞・直木賞は年に2回、1月と7月に選考会が開かれます。
📅 上半期(1〜6月の作品) → 7月中旬に選考会・発表
📅 下半期(7〜12月の作品) → 翌年1月中旬に選考会・発表
つまり次回の第176回は、2027年1月中旬に結果が出る見込みです。候補作の発表は、選考会の約1ヶ月前(12月中旬頃)が通例となっています。
賞のシーズンは、
「次に何を読むか」を決める絶好の機会です。
候補作の発表段階で気になる作品を読んでおくと、
受賞発表をより楽しめます。
当ブログでも次回の候補作が発表され次第、
まとめ記事を更新します。
まとめ
📌 第175回のポイント
🏆 芥川賞 → 小砂川チト『ゾンビ回収婦』(僅差・3度目の候補で受賞)
🏆 直木賞 → 朝倉かすみ『けんぐゎい』(満場一致・初の時代小説)
🎤 話題 → 若林正恭『青天』が芸人として異例の候補入り
📖 安く読む → 『文藝春秋』9月号に受賞作全文掲載
🎧 短い受賞作 → 約160ページ。耳で聴くのも一手
芥川賞と直木賞は、年に2回、必ずやってくる読書の指針といえます。
「何を読めばいいか分からない」ときに、
これほど頼りになる基準はありません。
気になる1冊から、
手に取ってみてください。
よくある質問
Q. 芥川賞と直木賞、どちらが「上」ですか?
A. 優劣はありません。対象とするジャンルが違うだけです(純文学とエンターテインメント)。どちらも日本文学振興会が主催する、同格の賞です。
Q. 受賞作はいつ書店に並びますか?
A. 直木賞は単行本が対象なので、発表時点ですでに書店にあります。芥川賞は文芸誌掲載作が対象のため、受賞後に単行本化されるのが一般的です。今回の『ゾンビ回収婦』は講談社から刊行されています。
Q. 受賞作を無料で読む方法はありますか?
A. 芥川賞受賞作は『文藝春秋』9月号に全文掲載されます。この雑誌が読み放題サービスの対象になっていれば、月額料金のみで読める場合があります。また図書館で借りるという方法もあります。
Q. 候補作は受賞作より劣るのですか?
A. そんなことはありません。候補に挙がること自体が極めて高い評価であり、「受賞を逃した候補作のほうが好き」という読者も多くいます。今回で言えば、凪良ゆう・原田ひ香・若林正恭という人気作家が候補に並びました。
今期の1冊を、あなたに。
『けんぐゎい』
- 第175回直木賞・満場一致で受賞
- 作家生活20年、初の時代小説
- Amazonならプライム会員で翌日配送
話題が続いているうちに、今期の1冊を。











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